皆さんは、鷺巣詩郎という作曲家・編曲家を知っていますか?
鷺巣詩郎といえば、新世紀エヴァンゲリオン、シン・ゴジラ、進撃の巨人の音楽を手掛けたことで有名な、いま、日本で一番有名な作曲家・編曲家といっても、決して言い過ぎではないと思います。
鷺巣詩郎さんのつくった曲は、エヴァンゲリオンでもシン・ゴジラでも、進撃の巨人でも、どれか1つでも見れば分かると思いますが、とにかく、荘厳、壮大です。
しかも、メチャクチャに格好いい!
そんな鷺巣詩郎さんは、どのようにして、こんなとんでもない曲を作っているんでしょうか。
気になったので調べてみることにしました。
鷺巣詩郎の壮絶な仕事量
鷺巣詩郎さんは、著書で、自分の仕事である編曲家について、以下のように語っています。
スタジオ・ミュージシャンなら「○月×日、○時より×時まで」と事前に押さえられた時間だけが勤労時間だが、編曲家はミュージシャンより数十倍も長くスタジオに滞在せねばならない。さらに録音当日までの自宅労働が凄まじい。オーケストラ編曲は建築設計図みたいな大判スコア(総譜)数十頁を書き上げなければならず、しかも同時に旋律、和音、リズムすべてを「創作」しながら書くという、底なしの頭脳労働でもある。
編曲家は、文字通り、食事も風呂もトイレにもいけないほど忙しい仕事なのです。
ましてや、鷺巣詩郎さんは海外へ移動しながらこれをするのですから、人間業じゃないですよね。
鷺巣詩郎の音楽観
鷺巣詩郎さんのつくる曲は、とてもバリエーションが豊かで、しかも、心に刺さります。
でも、どうやって、こんな曲をつくるのでしょうか??
鷺巣詩郎さんは、メロディ、ハーモニー、リズムを学校の授業に例えています。
メロは国語
鷺巣詩郎さんは、『どんなメロでも、まず作ってみること、作り始め、作り続けること』と言います。
ハーモニーの構成力や譜面書きは、だれにでもできることではありませんが、メロディを発想することは誰にでもできます。
だからこそ、メロは国語(文章)なのです。
そこに上手下手はあっても、文章は普段のメールやLINEのメッセージのように誰にでも書けますよね。
子供から大人まで、誰にでも書けるのがメロディなのです。
ハモは数学
ハモとは、美しいメロディが複数で響き合うこと。
デイヴィッド・フォスターとモーリス・ホワイトがグラミー賞を受賞することになった名曲After the love is goneは、和音進行が完璧で美しく、非の打ち所がない、と鷺巣詩郎さんは評します。
それは、長い尺の方程式を解くときのような転調の連続で、ふと気がつけば振り出しに戻っているかのような気さえしてきます。
回答と試算を繰り返しながら、理解を深めるのがコード進行。そこに魔法は存在せず、確固たる理論に裏付けられる真実のみがあります。
リズムは道徳
リズムは、体育と思われがちですが、道徳です。
鷺巣詩郎さんによれば、リズムは、踊れればいいじゃん、みたいなそんな単純なものではないのです。
鷺巣詩郎さんは、カトリック系の小中高校だったため、道徳の授業中は聖書をたくさん読まされたのだとか。
だからこそ、リズムもバイブルを読むように、過去の音楽を繰り返し繰り返し何度も聴いて体に染み込ませていくものなのです。
また、以下の言葉は本書の帯に引用されていましたが、こちら、すごい名言だな、と思います。
リズムとは「ミクロの化け物」であると同時に「ニュアンスの権化」でもある。まったく同じフレーズ(譜割り)を叩いても、バーナード・パーディとジェイムズ・ギャドソンは天と地ほども違うだろう。ジョン・ロビンソンとスティーヴ・フェローンでも同じコト。超物理的に分析すればミクロのタイミングと音色の差なのだが、たとえそれらを同一にしてもニュアンスという壁に今度は突き当たってしまう。だから、リズムは深くて面白いのだ。
鷺巣詩郎執筆録其の1のその他の名言
ここでは、本書を読んでいて、個人的に名言だと思った言葉を紹介していきます。
レコード収集オタクは、元来ミュージシャンに多い。なぜなら「過去の名演」の数々をコピーし、理解することなしに、良いミュージシャンになれる手段はないからである。
この言葉は、ミュージシャン以外に映画監督、漫画家、小説家などにも同じことが言えると思います。
だから、音楽、映画、本をこよなく愛するぼくは、何となく、希望みたいなものが湧いてくるのです。
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