映画『カジュアリティーズ』はベトナム戦争映画の傑作。
コメディ映画の出演が多いマイケル・J・フォックスのシリアス演技が見られるところも評価のポイントです。
この記事では、もう30年以上前の映画ですが、今鑑賞しても古びていない『カジュアリティーズ』の見どころをあらすじ含め簡単に解説します。
カジュアリティーズってどんな映画なの?キャストは?
映画タイトル | カジュアリティーズ |
原題 | Casualties of War |
制作国 | アメリカ合衆国 |
公開年 | 1989年 |
監督 | ブライアン・デ・パルマ |
原作 | ダニエル・ラング 元になったのは、1966年、ベトナム戦争中に起きたアメリカ軍兵士による少女強姦、殺害事件 |
脚本 | デヴィッド・リーブ |
音楽 | エンニオ・モリコーネ |
主なキャスト (ソフト版吹き替え) |
マイケル・J・フォックス(水島裕) ショーン・ペン(納谷六朗) ドン・ハーヴェイ(大塚芳忠) ジョン・C・ライリー(玄田哲章) ジョン・レグイザモ(鈴置洋孝) テュイ・テュー・リー(深見梨加) エリック・キング(秋元羊介) ジャック・グワルトニー(辻親八) ヴィング・レイムス(西村知道) ダン・マーティン(小関一) デイル・ダイ(小関一) etc. |
描かれる 年代と舞台 |
1966年~1974年 1966年、ベトナム戦争中に起きたアメリカ陸軍兵士による戦争犯罪(兵士による少女強姦殺人がモデル 1974年に、その事件を回想する |
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★★★ 『カジュアリティーズ』2400 『カジュアリティーズ映画』140 |
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『カジュアリティーズ』は、ブライアン・デ・パルマ監督が撮ったベトナム戦争映画の名作。
ブライアン・デ・パルマ監督は、こんな映画も撮っていたんですね。
それにしても、こんなにも重い題材を、エンターテイメントへ見事に仕上げてみせたブライアン・デ・パルマ監督のセンスには脱帽するばかりです。
『カジュアリティーズ』は、本当にイイ映画です。
え? イイ映画だなんて、とんでもないですって??
ネタバレしますが『カジュアリティーズ』の元ネタは実話です。
そして、その題材は暗いし重たい。
レイプと殺人を取り扱っているため、観る人を選びます。
でも、誤解を恐れずに言うなら、本当に良い映画です。
何が良いのかって、『カジュアリティーズ』には戦場の葛藤が、本当にリアルに描かれているからです。
観ているぼくたちに極限状況の選択を突き付けて、とんでもない場所へ連れていってくれます。
ネタバレあり!カジュアリティーズのあらすじをザックリ紹介!
映画『カジュアリティーズ』で描かれるのはベトナム戦争で、普通の青年のモラルが崩壊していく姿です。
主人公は、マイケル・J・フォックス演じるマックス・エリクソン上等兵。
マックス・エリクソン上等兵
誠実で良いヤツ
マイケル・J・フォックスは、嫌味のない正しさの雰囲気を持つ稀有な俳優ですね
(出典:『カジュアリティーズ』より)
エリクソンは、ベトナムの戦場で、米兵によるベトナム人女性のレイプを目撃することになります。
あまりのことに愕然とするエリクソン。
しかし、ショーン・ペンが演じるトニー・ミザーブ軍曹を筆頭に、女性をレイプした米兵たちは、エリクソンにも女性をレイプすることを強要します。
左から
アントニオ・ディアズ上等兵(ジョン・レグイザモ)、
トニー・ミザーブ軍曹(ショーン・ペン)、
ハーバート・ハッチャー上等兵(ジョン・C・ライリー)、
トーマス・E・クラーク伍長(ドン・ハーヴェイ)。
(出典:『カジュアリティーズ』より)
気弱な感じがするジョン・レグイザモと若干間抜けな感じがするジョン・C・ライリーはともかく、ショーン・ペンとドン・ハーヴェイの二人がかりで何かを強要されたら、普通の人だったら素直に言う事を聞くしかないですよね(汗)
トニー・ミザーブ軍曹(ショーン・ペン)たちは、エリクソンを共犯者に仕立て上げることで、レイプの事実を黙秘させようとします。
でも、そこは我らが優等生、マイケル・J・フォックス。
ガキ大将上がりの軍曹、トニーの強要に断固「ノー!」を突き付けます。
しかし、もちろん、そんなことをしてタダで済むわけがありません。
ベトナム人女性をレイプすることを頑なに拒んだエリクソンは、口封じのために、味方であるはずの米兵から命を狙われることになります。
トイレで手榴弾で吹っ飛ばさるマイケル・J・フォックス
(出典:『カジュアリティーズ』より)
これ、めちゃくちゃ怖くないですか??
戦場では、正しいことをしようとすると味方にぶっ殺されるんですよ??
『カジュアリティーズ』を観ると、
戦場でモラルを失わなずにいることがどんなに難しいことなのか
がよく分かります。
人間らしい心を持つと、生存の確率が下がるのです。
なぜなら、本当に恐ろしいのは、敵より味方だから。
戦争は、敵も怖いですが、味方も十分怖いんですよね。
エリクソンのように、仲間が強要するレイプや殺人を拒めば、味方に殺されることもありえるのです。
戦場では、仲間との調和を乱したり、上官に逆らったりすることはとっても危険。
自分のポリシーを貫くことも命がけなのです。
カジュアリティーズはある意味ホラー映画
『カジュアリティーズ』は本当に背筋が震えるような映画です。
ぼくの中では、この映画は、ベトナム戦争映画であると同時にホラー映画です。
程度の差こそありますが、このような問題は、平和な時代の社会人も出くわすことってありませんか?
たとえば、自分が良くないと思っていることを、上司や社長の方針でやらされるケース。
会社の命令に従わないと、冷遇されたり、仲間外れにされたりすることってありますよね。
場合によっては、クビにされて生活が脅かされることだってありえます。
このとき、頼れる味方だったはずの同僚や上司が敵に変わってしまうのです。
本来なら、ぼくたちは、一丸となってライバル他社と争うべきです。
しかし、いつの間にか、味方であるはずの同僚を警戒し、争っていることに。
これって、おかしいことだと思いませんか?
カジュアリティーズとプラトーンの共通点
『カジュアリティーズ』のストーリーは、オリバー・ストーン監督のベトナム戦争映画『プラトーン』と重なるところがあります。
『プラトーン』にも、正義感がある兵士と、モラルが欠如した兵士との衝突が描かれていました。
ただし、『カジュアリティーズ』の方が当事者感が何倍も強いです。
何しろ、主人公であるエリクソン自身が目撃し、積極的にレイプを止めようとし、実際に命を狙われるわけですから。
エリクソンは、何とかオアン(テュイ・テュー・リー)を救おうとする
(出典:『カジュアリティーズ』より)
だからこそ、ぼくたちは考えないわけにはいかないのです。
もしも、仲間が、上官が、何の罪もないベトナム人の女性をレイプし始めたらどうする??
しかも、そのレイプを一緒にやろう、と誘われたら、ぼくは、どうすればいい??
その挙句、口封じのために、その女性を殺すことまで強要されたら??
戦争という異常な状況下で行われるレイプ。
それを止めることは簡単ではありません。
下手に止めたり、上官に報告したりすれば、恨みを買って味方に殺される危険だってあります。
アメリカの故郷では、愛しい妻と娘が自分の帰りを待っている。
ぼくは、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ…!
主人公をマイケル・J・フォックスが演じることで生まれる普遍性
『カジュアリティーズ』は、普通の男であるエリクソンに、とんでもない困難を与えます。
エリクソンはそれほど強い軍人ではありません。
腕っぷしで言えばミザーブ軍曹(ショーン・ペン)の方が勝っているでしょう。
しかも、エリクソンは、ミザーブ軍曹に過去に命を救われており、とても大きな恩があります。
そんなミザーブと、かれの部下の犯した罪を告発し、刑務所に送るという行動は、一緒に戦った仲間への裏切り行為ではないでしょうか。
どうする?
命をかけてまで、赤の他人のベトナム女を助ける意味なんてあるのか…?
エリクソン(マイケル・J・フォックス)は、
一つの答えをぼくたちに示してくれる。
(出典:『カジュアリティーズ』より)
ですが、その答えは、完璧な答えではありません。
エリクソンの決断は、かれに相応の代償をもたらします。
だからこそ、『カジュアリティーズ』のエンディングは、不穏であり、後味の悪さが残るのです。
カジュアリティーズという言葉の意味とは?
カジュアリティーズという言葉の意味は何でしょう?
カジュアリティーは、日本語に訳すと、(事故による)負傷者、死者、不慮の災難、不慮の傷害、奇禍を意味します。
つまり、カジュアリティーズは負傷者たち、死者たち、複数の不慮の災難などを意味します。
そして、カジュアリティーズの原題はCasualties of War。
戦争で生じる複数の死者、不慮の災難を意味しているのではないでしょうか。
不慮の災難って何なのか。
それは、この映画を見た人ならもう分かりますよね。
【まとめ】カジュアリティーズを見るメリット!極限状況の極限の選択を自分ごと化できる!
繰り返しになりますが、
『カジュアリティーズ』は、映画を観ている人たちに、いつの間にか、極限状況の決断を迫るというとんでもないところへ連れていってくれます。
観ていて辛くなる映画ですが、しかし、非常に優れた作品であることは間違いありません。
そして、マイケル・J・フォックスは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズだけでないんだ、と思わせてくれる魂の作品でもあります。
それにしても、マイケル・J・フォックスって、本当にいい俳優ですね。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティ・マクフライはぼくの永遠のヒーローですが、『カジュアリティーズ』のエリクソンも、また、ぼくにとっては同じくらいに尊いヒーローです。
マイケルのような、厭味のない誠実さを感じさせてくれる俳優って、なかなか珍しいと思います。
ぼくの少年時代に一番友達になりたかった人です。
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【補足1】
ブライアン・デ・パルマ監督は、『カジュアリティーズ』の成果を受け、イラク戦争の暗部を抉る『リダクテッド 真実の価値』というモキュメンタリー映画も撮っています。
『リダクテッド 真実の価値』は、2007年の第64回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しました。
アメリカ自身が晒したくない、観たくない現実を突きつけるデ・パルマ監督の身を削るような創作スタイルは非常に尊敬させられます。
娯楽映画だけでなく、このような映画も撮れるブライアン・デ・パルマは、アメリカが誇る名監督です。
【補足2】
『カジュアリティーズ』の出演陣は、実は結構豪華、というか玄人好み。
マイケル・J・フォックスとショーン・ペンの演技対決を盛り上げるのは、ドン・ハーヴェイ、ジョン・C・ライリー、ジョン・レグイザモ。
この3人は、ハリウッドの中堅俳優で、名わき役として現在も最前線で活躍している俳優でもあります。
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