皆さんは、映画ホワイト・バッジを知っていますか?
『ホワイト・バッジ』は、多分、映画好きの人でも知らない人の方が圧倒的に多いだろう超マニアックなベトナム戦争映画です。
そんな『ホワイト・バッジ』ですが、この映画、実は、ベトナム戦争の超名作『ディア・ハンター』と似ている部分が結構あって、ぼくは、韓国版『ディア・ハンター』なのではないか、と思っているんです。
今回、いい機会なので、このベトナム戦争映画をここで紹介したいと思います。
映画タイトル | ホワイト・バッジ |
原題 | 하얀 전쟁 |
制作国 | 韓国 |
公開年 | 1992年 |
監督 | チョン・ジヨン(鄭智泳) |
原作 | アン・ジョンヒョ |
脚本 | コン・スヨン チョウ・ヨンチェル シム・スンボ チョン・ジヨン |
主なキャスト (特別完全版の吹き替え) |
アン・ソンギ イ・ギョンヨン シム・へジン トッコ・ヨンジェ ホ・ジュノ キム・セジュン ホ・ソク etc. |
描かれる 年代と舞台 |
1979年からベトナム戦争を回想する |
人気・注目度 GKV (2020年9月時点) |
★ 『ホワイト・バッジ』90 『ホワイト・バッジ映画』20 |
視聴できる媒体 (2021年5月時点) |
Amazon |
改めて、『ホワイト・バッジ』は韓国産のベトナム戦争映画の秀作です。
ベトナム戦争映画は、アメリカ産が多いですが、実は韓国だって負けてはいないんです。
(映画の本数的には圧倒的に負けてますが)
『ホワイト・バッジ』は、とても良くできている映画なので、映画好きなら、見ておいて損はないでしょう。
それでは、早速、『ホワイト・バッジ』のあらすじを説明していきますね。
映画『ホワイト・バッジ』の原作は安正孝の『白い戦争』
『ホワイトバッジの』原作は、韓国の英字新聞コリアヘラルドのライターであるアン・ジョンヒョ(安正孝)。
かれの半自伝的処女小説『ホワイト・バッジ(白い戦争)』が原作となっています。
この『ホワイト・バッジ』という小説は、出版したとき、ほとんど自国の韓国では話題になりませんでした。
しかし、アメリカで出版すると、それが映画化されて大ヒットとなります。
また、『ホワイト・バッジ』は、日本でも評価が高く、1992年の東京国際映画祭では、グランプリと最優秀監督賞を受賞しました。
映画『ホワイト・バッジ』のあらすじの概要-アメリカよりひどいベトナム戦争の悲惨を体験する韓国兵-
物語のなかで、ベトナム戦争の凄惨な記憶が少しずつ蘇っていく
(出典:『ホワイト・バッジ』より)
映画『ホワイト・バッジ』のあらすじというか要点、概要、見どころを簡単に紹介します。
『ホワイト・バッジ』では、韓国側の視点からベトナム戦争を描いています。
日本ではあまり知っている人はいないかもしれませんが、ベトナム戦争で戦っていたのはアメリカとベトナムだけではありません。
なんと、韓国も、アメリカに次いで、たくさんの兵隊をベトナムへ送っていたのです。
そのため、『ホワイト・バッジ』で描かれるのは、韓国軍の若い兵隊たちが、ベトナム戦争でどのような種類の地獄を味わったのか、ということなのです。
韓国は、アメリカと同様に、ベトナム戦争の泥沼に頭からつま先まで浸かってしまったのでした。
何の関係もない民間人を口封じで殺すことを強要されるピョン一等兵(イ・ギョンヨン)
(出典:『ホワイト・バッジ』より)
農民とゲリラ兵の区別もつかず、徐々に疑心暗鬼の闇に心を呑み込まれ、誤って民間人を射殺。
その口封じのために、更に民間人を刺殺。
悪事を強要された部下がキレて、まさかの上官殺しが発生。
ベトコンの自爆に巻き込まれ、バラバラになった仲間の肉片をずだ袋で回収。
その一方で、アメリカ兵の遺体は、整形し、冷凍保存をきちんとして輸送されているのに……。
アメリカのベトナム戦争映画を見ると、アメリカの兵隊たちが、いかにひどい地獄を体験したかが分かります。
でも、『ホワイト・バッジ』を見ると、韓国軍の兵士たちも、アメリカと同等、あるいはそれ以上の地獄を見ていたことが分かるでしょう。
『ホワイト・バッジ』は、演出こそ地味であるものの、戦争描写には独特のリアリティがあり、見ると忘れられなくなる作品です。
そんな『ホワイト・バッジ』は、ベトナム戦争を描きつつも、ベトナム戦争後の世界も描かれます。
『ホワイト・バッジ』はベトナム戦争と、戦争後のPTSD地獄もしっかりと描く
ベトナム帰還兵である作家のハン・ギジュ(アン・ソンギ)と、元部下のピョン・ジンス一等兵(イ・ギョンヨン)は、未だ、PTSDで苦しんでいます。
戦争が終わったいまもベトナム戦争の記憶に苦しみ続けている
(出典:『ホワイト・バッジ』より)
ハンは、結婚生活は破綻し、家族と離れて暮らしており、酒浸りです。
そして、『ホワイト・バッジ』のもう一人の主人公であるピョン一等兵は、更に重いPTSDで苦しんでいます。
ピョン一等兵は、無学だけれど、元は気のいい優しい男でした。
しかし、ベトナム戦争で味わった地獄が、かれを変えてしまいます。
ゴッホみたく耳を切り落とそうとする
気のいい看板屋だったピョン一等兵は完全に心が壊れてしまった
(出典:『ホワイト・バッジ』より)
ピョン一等兵は、雷の音が聞こえると過剰な防御反応を見せたり、死んだはずの戦友たちを生きていると思い込んでいたり、ゴッホよろしく自分の耳を切り落とそうとしたりします。
ハンとピョン一等兵のなかでは、ベトナム戦争は、まだ終わっていないのです。
『ホワイト・バッジ』という映画は、韓国軍が参加したベトナム戦争という戦争の残酷さを、これでもか、というほど伝えています。
また、この映画では、ベトナム戦争で受けた心の苦しみからどうすれば解放されるのかがテーマとなっているのだ、とも感じました。
ただし、その解放のための手段は、悲しすぎます。
ハン兵長のラストの決断は、あまりにも救いがなさすぎるんですよね。
ベトナム戦争の辛い記憶から逃れるために、あのような選択をするというのは、人間としての敗北以外の何物でもないのでしょうか。
でも、あれ以外の結末があったのか、と聞かれると正直分かりません。
ハン兵長とピョン一等兵は、同じ地獄を体験したもの同士の絆があり、かれらにしか通じないものがあるのでしょう。
ハンとピョンは、2人なりのやり方で、ベトナム戦争へケリをつけたかったのかもしれませんね。
まだ見ていない人のため、結末は言いません。
でも、救いがないラストや鬱展開が大丈夫な人は、ぜひ見てみて欲しいです。
見どころとしては、ハン(アン・ソンギ)の苦悩に満ちた演技と、ピョン(イ・ギョンヨン)の発狂演技、その落差、苦しみ方の違いについても注目してほしいですね。
アン・ソンギは、この映画で、アジア・パシフィック映画祭主演男優賞も受賞しました。
コメント