村上春樹翻訳(ほとんど)全仕事から分かる村上春樹の異常な仕事量

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村上春樹

村上春樹が大好きなフミショです。
というわけで、村上春樹翻訳(ほとんど)全仕事を読みました。

実は、ぼくは、村上春樹さんは長編小説はほとんど読んでいるのですが、翻訳された小説はほとんど読めていないんですよね。

なので、村上春樹さんの翻訳した海外文学でおすすめなものを知る意味でも一冊家にあってもいいかな、と購入しました。

以下、村上春樹翻訳(ほとんど)全仕事の感想になります。

作家しながら翻訳した総数は70作品以上

村上春樹さんが、デビューしてから翻訳してきた海外小説の総数は、七十冊以上になります。

これまで、村上春樹さんは、風の歌を聴け、から、騎士団長殺しまで、たくさんの長編小説を書いてきたわけてすが、それに並行して、フィッツジェラルド、カーヴァー、カポーティー、サリンジャー、チャンドラー、ティム・オブライエンなどの小説を翻訳してきたことになります。

これは、とても精力的で、並みの仕事量じゃないですよね。
村上春樹さんは、この村上春樹翻訳(ほとんど)全仕事のなかで、

とにかく翻訳という作業が好きで、小説を書いている時期であっても、時間が余ればつい翻訳に手が伸びてしまう。好きな音楽を聴きながら、好きなテキストを翻訳していると、とても幸福な気持ちになれる。

と言っているのですが、それでも、翻訳がとても大変な作業であることは変わらないですから、やっぱり、すごいなと関心してしまいます。

海外文学翻訳者としての村上春樹の功績

海外文学翻訳家としての村上春樹さんの一番の功績って、レイモンド・カーヴァーを日本で有名にしたことではないかな、とぼくは思います。

本書によれば、村上春樹さんがレイモンド・カーヴァーを翻訳し始めたころは、まだ、アメリカでも全然有名な作家ではなかったそうです。
かれが翻訳をしている間に、レイモンド・カーヴァーは、作家としてどんどん成長してゆき、より質の高いものを書くようになっていったのだとか。

ぼくも、村上春樹さんの翻訳したレイモンド・カーヴァーの短編小説は読んでいますが、分かりやすい言葉で、こうも深い味わいのある小説を書けるなんて……と唸らされました。

レイモンド・カーヴァーの小説は短編ばかりなのでどれも手軽に読めて、しかも、話も深いのでおすすめですが、特に個人的に好きだな、と感じたのは『大聖堂』と『ささやかだけれど、役に立つこと』です。

春樹小説好きにはティム・オブライエンも波長が合うかも

村上春樹さんの小説が好きな人には、ティム・オブライエンの小説も波長が合うかもしれません。

ティム・オブライエンの小説は、翻訳者である村上春樹さん自身が惚れ込んで取り組んだ小説です。
ティム・オブライエンについては、レイモンド・カーヴァー以上に、自分が発見した、自分の作家だという自負が強いみたいですね。

ティム・オブライエンの僕的なおすすめは、本当の戦争の話をしよう、とニュークリア・エイジです。

本当の戦争の話をしよう

ティム・オブライエンの本当の戦争の話をしよう、は海外文学小説が好きな人には、名前を知っている人も多いと思います。

それに、マイケル・サンデルのこれからの正義の話をしよう、など似たタイトルの書籍も多いですし。
でも、こちらが本家です(笑)

ティム・オブライエンという作家は、とにかく、ベトナム戦争というテーマにとらわれていて、ティム・オブライエンのベトナム戦争観みたいなものが伝わってきます。
個人的にすごく映画化して欲しい作品なのですが、いかがでしょうか。

村上春樹さんは、ティム・オブライエンの小説について、かれは実際に兵士として戦争に行き、激しい戦いを体験しているため、戦場で経験した痛烈なリアリズムと、現実や記憶から逃れるための想像力(マジックリアリズム)が拮抗して、それがティム・オブライエンの小説の原風景になっているのではないか、と語っています。

ちなみに、本当の戦争の話をしよう、はこの小説の原題ではありません。
原題は、The things they carried です。
直訳すると、彼らが背負った物、となりますが地味ですよね。。。

ニュークリア・エイジ

ニュークリア・エイジは、村上春樹さんが個人的に惚れ込んで翻訳した小説です。

年齢も自分と近く、書くものも共感でき、ティム・オブライエンは、村上春樹さんの作家だという意識が強いのだとか。
確かに、なんとなく、作風に共通した部分もあるような、ないような。おそらく、翻訳しているわけだから
、村上春樹さんは確実にティム・オブライエンに影響を受けているはずですよね。

ティム・オブライエンについて、村上春樹さんが評価しているところは、かれが自分の心を直視しようとしている作家である、というところです。

余計な回り道をせずに核心に切り込んでいくところが、ティム・オブライエンの持ち味というところで、率直に物事を語る作家が好きな人にはおすすめかもしれないです。

従来の戦争小説とは異なるアプローチをしているところも、ニュークリア・エイジの魅力です。

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