今こそ読み返したい不条理・理不尽文学の傑作、フランツ・カフカの変身!

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不条理・理不尽な文学

最近、急に興味が湧いていたので、フランツ・カフカの変身を読み直しています。
会社で不条理かつ理不尽な目にあわされたので、大分フラストレーションがたまっているんですよね。

『変身』といえば、不条理・理不尽文学の傑作。
いきなり、主人公のグレゴール・ザムザくんが、朝起きたら毒虫に変わっている!

本当に不条理で理不尽だと思います。
だって、グレゴール・ザムザは、なにか、自分の外見が毒虫に変わっても仕方がないようなヒドイことをしたわけじゃないのですから。

フランツ・カフカは、村上春樹さんの小説でも引用されることがあり、この小説やカフカという人物は、村上春樹さんも注目しているみたいですね。タイトルも海辺のカフカですしね(笑)

不条理や理不尽は、フランツ・カフカの専売特許ではなく、この世界では往々にして蔓延しています。
だからこそ、不条理かつ理不尽に降りかかってくる不幸に対して、
「ええっ! そんなっ!! どうして私がこんなヒドイ目に遭うの!!?」
と、無防備に驚き、嘆き悲しむのではなく、
「はいはい、待っていたよ不条理さん。ああ、理不尽くんもこんにちは。そろそろ来る頃だよね」
と、大人の対応をして迎え入れたいものです。

不条理も理不尽も、災害のように降りかかってくるので、ジタバタしても仕方がありません。

というわけで、今回は、不条理と理不尽に耐えるために、フランツ・カフカの『変身』をおすすめし、この小説の魅力について解説したいと思います。


カフカの変身のあらすじ

グレゴール・ザムザは、朝、目を覚ますと、自分が巨大な毒虫になっていることに気付く。

なぜ、こんな異常な事態になってしまったのだろうか。
その謎が解明されないまま、ありふれた日常が過ぎていく。

家族に追い立てられ、自分がそれまで食べていたものが受け付けなくなり、ゴミのようなものを食べるようになる。
次第に、家族の自分への態度は冷たいものへ変っていき、最後は、みじめに死んでいく。

毒虫になったことによる身体的変化や周囲の人との関係性などを、カフカ独特の文体で、レポートのように事実のみ濃密に伝えていく。
カフカの冷静な語り口が、ある意味でギャグともとれる、海外文学の大傑作です。

ギャグ?
ええ、そうなんです。

単なる不条理・理不尽を嘆き悲しむのではなく、淡々と冷静に事実をレポートしていくのはユーモアとも取れますし、虫になったのに、その原因はそっちのけで仕事の心配ばかりしているグレゴール・ザムザには笑いを誘われることも。

不条理や理不尽を、笑いで乗り切ることも必要なのかもしれませんね(笑)

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変身の魅力

『変身』の魅力って何でしょうか。

不条理なことが主人公の身に起きることでしょうか。
ある朝、起きたら毒虫になっていた、というトンデモな展開でしょうか。

まあ、それもあるんですが、『変身』の魅力、というのは勤め人の世知辛さについて書かれている、ということだと思います。
カフカに『変身』が書かれたのは1912年で、世に出たのは1915年ですが、このときに書かれたことは、今にも通じているんですよね。

毒虫になったグレゴール・ザムザは、最初、自分の姿が毒虫になったのに、何が原因でそうなってしまったのか、ではなく、会社にいけないことについて心配ばかりしています。

そして、毒虫になって会社に出勤しないグレゴール・ザムザの様子を見るために、勤め先の支配人が自宅を訪れることになります。
会社を来なかったから、支配人が休んだ理由を知るために自宅を訪ねる、というのは、勤め人が会社に管理されていることを示しています。
もしかしたら、カフカ自身も会社を休んだときに上司が自宅に来たことがあるのかもしれませんね。
そんな等身大のキャラクターであるグレゴール・ザムザが、毒虫になってしまうからこそ、ぼくたちも感情移入して読むことができるのではないでしょうか。

とはいえ、カフカが『変身』を書き上げた時代と比べれば、100年以上が経過したため、多少は働き方についても変化しました。
いまは、自宅にいながら働くこともできます。
もし、虚弱なカフカがこの時代に生きていたら、もうちょっと生きやすかったかもしれません。
カフカは、40代でこの世を去りましたが、もっと長生きできたかもしれないですよね。

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変身が実存主義的な文学とされる理由は

不条理や理不尽文学としてフランツ・カフカの『変身』が紹介される理由は分かるのですが、それでは、なぜ、『変身』はその一方で、実存主義的な文学として紹介されることも多いのでしょうか?

ぼくには、いまいち、実存主義というものが良く分かりません。
ので、ちょっとだけ簡単に実存主義について調べてみました。

本当に簡単に説明してしまうと、実存主義というのは、、実存(現実にあるもの)は、本質に先立つ、という考えの元になりたっています。

たとえば、スプーンは食べ物をすくう、という目的(本質)があり、そこから人によって作られます。(実存)
ですが、作られたスプーンを、食べ物をすくうために使うか、あるいは、告発という映画みたいに人を刺して殺すために使うかどうか、というのは、スプーンを持っている人が自由に選べるわけです。

だから、スプーンという実存の本質を、食べ物をすくうことにするか、人を殺すことにするか、を人間は自分の手で考えて、決めていく必要があるのだ、ということになります。

とか、なんとか言ってると、小難しく聞こえてしまいますが、フランツ・カフカの『変身』でも、きっと同じようなことが言えるのでしょう。

毒虫(実存)の本質は、グレゴール・ザムザという人間のはずでした。
しかし、その毒虫(実存)に対して、家族がとった行動というのは、何だったでしょうか。

カフカの『変身』は、毒虫となったグレゴール・ザムザへの家族の扱いを描くことで、逆説的に、ぼくたちの世界がいかに『実存が本質に先立つ』ことについての悲しさを描いているのかな、と感じます。

もちろん、この『変身』という小説は、ただそれだけのことしか描いていないような単純なものではないのですが。

だって、たった、それだけのことを言いたいだけだったら、この記事を読んじゃえば、それで終わりじゃないですよね(笑)

この小説は、第一次世界大戦後のドイツの精神的危機を投影している、とも言われています。
戦争で負けて無力感を味わったドイツ国民の理不尽な気持ちや周辺国の扱いみたいなものも、グレゴール・ザムザの境遇からは確かに伝わってきますよね。

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実はカフカの『変身』は映画化されている

カフカの『変身』を読むのが面倒くさい人は、映画を見ることをおすすめします。
実は、カフカの『変身』は映画化されているので、こちらを見れば、『変身』がどんなストーリーか、簡単に把握することができるでしょう。

意外なことに、『変身(2002)』を映画にしたのは、ロシア屈指の演出家であるワレーリイ・フォーキン。
なかなか斬新なアレンジをしてくるので驚きです。

このロシア版の変身(2002)については、カフカのオリジナル小説『変身』とテイストが異なるので、映画と原作の違いが楽しめます。
原作小説と映画の差異について、いくつか、見ていて気付いた点を挙げていきます。

小説と映画の違い・毒虫を俳優本人が演じ、着ぐるみやCGなどを使わない
・映画ではグレゴール・ザムザが喋れない

このロシア映画版の変身(2002)の一番コメントすべき点。
それは、毒虫を俳優本人が、着ぐるみやCGなしで演じるところです。

最初は、俳優本人が着ぐるみなし、CGなしで演じることについて違和感がありました。
が、途中で、着ぐるみもCGもないのに、俳優本人が毒虫に見えてくるぐらいに迫力があって驚きましたね。

変身(2002)は、数少ない『変身』を原作とした映画なので、こちらは是非みてみて欲しいです。

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フランツ・カフカの言葉に強く影響を受けている小説や映画

ぼくの知っている限りで、カフカの言葉が引用されている、カフカに強い影響を受けていると考えられる小説や映画や漫画を挙げていきます。

カフカの影響を強く受けている小説

まずは小説から。

村上春樹:海辺のカフカ 上下巻


フランソワ・リヴィエール:KAFKA/迷宮の悪夢(1992年)

カフカの影響を強く受けている映画

次は映画。

スティーブン・ソダーバーグ:KAFKA/迷宮の悪夢(1991年公開)

こちらは、順次更新していく予定です。

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