北欧ミステリの秀作『熊と踊れ』の感想・評価。兄弟の絆にハアハアできる銀行強盗小説だった

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ミステリ

熊と踊れ、はアンデシュ・ルースルンドとステファン・トゥンベリの共著で、北欧史上最高のエンターテイメントと名高いミステリ小説です。
それだけの評判なら、後に映画化する可能性も高いだろうから、あとで二倍に楽しめるはず。
そんな不純な動機から、熊と踊れを読んでみました。

熊と踊れのあらすじ

熊と踊れ、は簡単に説明するなら、暴力にまつわる家族の血と絆の物語であり、ある銀行強盗をする兄弟の物語です。

物語のモデルは、スウェーデンを震撼させた実際に起こった事件であり、実在の事件を下敷きにしているだけあって、リアリティがあります。

凶暴な父親によって、壊れた家庭で育ったレオナルド、フェリックス、ヴィンセントの三人兄弟は、軍の倉庫の中から、たくさんの銃器を盗みます。
三兄弟が銃器を入手した目的は、大きな銀行強盗をするため。
銀行をいくつも襲撃し、市警のブロンクス警部が、事件解決のために執念を燃やします。

果たして、三人兄弟は、無事に警察から逃げ切れるのか。

いきなり弾ける暴力

熊と踊れ、は過去の回想から始まりますが、そこで繰り広げられるのは、理不尽な災害のごとき父親の圧倒的な暴力です。

それが、この物語の方向性を決定的にします。
しかも、この父親が家族に向ける暴力は、アル中の父親が衝動的にふるう暴力とは一線を画しています。

三兄弟の父親であるイヴァン・ドゥヴニヤックは、自分が使う暴力について自覚的です。
長男のレオナルドは、イヴァンの目つきを、『これから何が起きてもおかしくない』という目つきではなく、『なにが起きるか、自分でちゃんとわかっている人間の目だ』と感じとります。

イヴァンがふるう三兄弟の母親への圧倒的な暴力。
それを止めようとするレオナルド。
そして、この暴力の物語は始まります。

熊と踊れの登場人物

ここでは、熊と踊れの登場人物を紹介します。

⬛レオナルド・ドゥヴニヤック
ドゥヴニヤック家の三兄弟の長男。
頭が切れ、腕っぷしも強い青年です。
映画化されるなら、個人的にはトム・ハーディーに演じて欲しいです。が、青い瞳に明るい金髪、白い肌なので、多分、無理ですねー。それに24才ということなので、今からすぐ撮ればギリギリ間に合いそうだけれど、年齢的にもちょっと難しいかな。

とにかく、この熊と踊れは、レオが格好いいです。
三兄弟の中で一番強く、頭が切れ、兄弟、仲間をいたわれる側面も持っている。
特に、三男のヴィンセントとの絆は、BLものとして鑑賞して、世の女性たちもハアハアできそうです(笑)

⬛フェリックス・ドゥヴニヤック
ドゥヴニヤック家の次男。21才。

⬛ヴィンセント・ドゥヴニヤック
ドゥヴニヤック家の三男。17才。ドゥヴニヤック兄弟の末弟で、一番年齢が低いため、子供扱いされている。

⬛イヴァン・ドゥヴニヤック
三兄弟の父親。暴力的かつ凶暴。
長男のレオに喧嘩に勝つ方法、戦いかたを徹底的に叩き込む。
三兄弟の母親ブリット=マリーに暴力を振るうDV男。

⬛ブリット=マリー・アクセルソン
三兄弟の母親。

⬛ヤスペル
三兄弟の幼なじみ。三兄弟の一員になりたがっている。
軍人に異様なほど憧れており、レオを尊敬している。
戦闘能力は優れているがなにかと迂闊な男。
やたらと、三男のヴィンセントに絡んでくる。

⬛アンネリー・エリクソン
レオナルドの恋人で、シングルマザー。

⬛セバスチャン・エリクソン
アンネリーの息子。

⬛ヨン・ブロンクス
ドゥヴニヤック三兄弟を追うストックホルム市警警部。

熊と踊れの感想と評価

なかなか、いろいろなところで高い評価を受けている『熊と踊れ』ですが、実際のぼくの感想・評価を書きます。

熊と踊れの良かったところ

面白かったです。
軍の倉庫から重火器を盗むシーンや銀行強盗するシーンは、緊迫感に溢れ、サスペンスもあります。

ドゥヴニヤック三兄弟の絆がうらやましい

熊と踊れ、はドゥヴニヤック家の三兄弟の絆の話です。
三兄弟は、硬い絆で結ばれていて、そんな風に深く結び付くことができることを羨ましく思います。

兄弟、姉妹同士仲がよい家庭をみると、どうやってそんな親密になれるのか、個人的に疑問に思います。
ぼくは、弟がいますが、そんなに仲はよくないからです。価値観の違いだったり、相手の短所が鼻についたり、それを受け入れられない自身の器の小ささが問題だったりで。

構成が現在と過去で交互に進む

熊と踊れ、は物語が現在と過去で、交互に進んでいきます。
現在では、大人になったドゥヴニヤック三兄弟が銀行強盗をする話。
過去は、三兄弟とその父親との暴力に彩られたエピソードが語られます。

ストーリーのメリハリがあるので、前編・後編にわけて映画化したら、話題性もあるし、本当に楽しそうだなと思いました。

発想の斬新さ

熊と踊れ、は、暴力的な家庭、環境で育ったドゥヴニヤック三兄弟の銀行強盗の物語、と、ただの銀行強盗の話ではなく、銀行強盗をすることになったドゥヴニヤック三兄弟特に長男のレオナルドに焦点をあてて過去の物語が進んでいくところが、ただの銀行強盗ものとは異なっています。
まあ、こういう話については、ベン・アフレックが監督、主演を務めるザ・タウンという映画(原作は、チャック・ホーガンの強盗こそ、われらが宿命)も、それなりに環境みたいなものは描かれていますが、銀行強盗をするに相応しく、職能としてそれをやるのにぴったりなバックボーンを持つドゥヴニヤック三兄弟の人物像が次第に分かってくるところが面白いと思いました。

ドゥヴニヤック三兄弟に対して、彼らを追うヨン・ブロンクス警部は、過剰の暴力の訓練を受けた者たち、暴力を職能として扱える者たち、と分析するのですが、この表現が面白いと思います。
確かに、過剰な暴力についての訓練を受けたものなら、仕事や生業としての銀行強盗は向いていますよね。
過剰な暴力の訓練。
業務としての暴力。
こういうのが、成立する仕事として、日本では極道稼業があるかと思います。

ちなみに、物語の舞台になるストックホルムは、治安がよいと言う人もいますが、現地のスウェーデン人によれば、移民の犯罪は頻繁に起こっているのだとか。なので、旅行者も、ニセ警官やスリ、引ったくりなどの被害に合ってしまう人々もいます。
そんな環境に身をおき、凶暴な父親を持つドゥヴニヤック三兄弟が銀行強盗を選んだのかと思うと、説得力が湧いてきますね。

スウェーデンのストックホルムの環境、現状などをざっとまとめた前書きみたいなものを、海外小説の翻訳の場合、あらかじめ、入れておいてくれると、より海外の小説が楽しめると思うのですが、ハヤカワ文庫の翻訳者さんたち、いかがですか。

熊と踊れの名台詞

ここでは、熊と踊れの個人的に格好良かった台詞を紹介します。
まあ、この熊と踊れ、はドゥヴニヤック家三兄弟の長男レオナルド・ドゥヴニヤックの格好よさを描くための話みたいなものなんで、格好いい台詞は、正直!みんなレオのものです(笑)

では、台詞を紹介していきます。

『熊のダンスだよ、ヴィンセント。殴って、混乱させて、退散する。次も同じことを繰り返す。銀行を次々に襲う。』

これは、帯にも書かれている、熊と踊れというタイトルにも関わってくる台詞です。

『世の中で成功するのはな、仕事と同化してる連中だけだ』『一流の芸術家は、家に帰ってメシを食うからって芸術家であることをやめはしない。トップクラスの証券ブローカーは、十七時を境にブローカーであることをやめはしない。いまのおまえは銀行強盗だ。つねにそのことを意識しろ。検問うまく突破したあとも、おまえはまだ銀行強盗なんだ。サツはずっとおれたちを捜してる。いまもクングスホルメンの本部で、おれたちの正体を突き止めようと躍起になってる。こっちがひとつでも、へまをやったら、やつらはそれを見逃さない』

これは、銀行強盗が成功したからといって油断しまくり羽目をはずしまくりなヤスペルを諫めるために語った言葉。
レオのプロフェッショナルとしての哲学を感じさせる言葉ですね。

熊と踊れの悪かったところ

アンデシュ・ルースルンドとステファン・トゥンベリの元の文体のせいか、ちょっと読みにくいところがあります。情景描写のだらだら羅列はキツイ部分があります。

あるいは、熊と踊れの著者であるこの二人のせいではなく、翻訳したヘレンハルメ美穂さんと羽根由さんの文章が自分に合わないせいかもしれません。

原文がもともと、読みにくい文章という可能性もあるのですが、ヘレンハルメ美穂さんの翻訳した文章については、『ミレニアム』が読破できなかったこともあり、自分には合っていないのかも。
あるいは、偶然、ヘレンハルメ美穂さんが翻訳している作家の文章が合わないのか。

いずれにせよ、北欧系ミステリは、個人的にもっと読みたいと思うのですが、なかなか、自分的に読みやすい文章に出会えないのが残念ですね。
柴田元幸さんや村上春樹さん、田口俊樹さん、黒原敏之さんの翻訳した文章は、自分にしっくりくる感じがしていて、海外文学を読むときは翻訳者で選ぶ傾向がぼくにはあります。
やっぱり、小説は内容も大切ですが、文章を翻訳している人との相性も、大切だと思うからです。

コメント

  1. Bablofil より:

    Thanks, great article.

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